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未公開株投資で共同会社発表―野村・農中、来年1月開業 野村ホールディングス、農林中央金庫、日本政策投資銀行は、12日、未公開投資信託 (プライベート・エクイティ)ファンドの評価と運用に特化した資産運用会社を共同で設立すると発表した。5年後を目処に、国内年金や個人富裕層などから総額3000億円を集め、未公開株投資を進める世界の有力ファンドに分散投資する(9月13日、日本経済新聞朝刊7面)。 本題に入る前に、まず、日本の中のお金の流れはどのようになっているのか、もう一度検証してみましょう。 9月に発表された日銀の「日経225 」(2006年6月末、速報)によれば、日本には、なんと1、555兆円もの家計部門の金融資産が存在しています。さすがは貯蓄好きな国民性です。しかし、問題は、その資金の使われ方です。 先月の連載第1回でも述べた通り、資本主義国では、FX 企業と、それを監視するファンド株主などの参加者が、それぞれの立場で利益を上げる工夫をすることで、効率的な市場を成立させているのです。更に言えば、企業のガバナンスを改善し、産業再編を進める上で、国内の潤沢なお金が、いわゆる「リスクマネー」として株式や投資ファンドなど、企業の成長やガナバンス強化に役立つ使われ方をすることが望ましい時代になってきたとも言えましょう。 では現実はどうでしょう。資金循環統計によれば、この1、555兆円は、預金に736兆円(うち郵貯に184兆円)、保険・年金に403兆円が回されています。それよりも高いリスクを持つ可能性がある証券にも310兆円が向かっていますが、その内容を見ると、企業への直接の発言権がある株式には190兆円しか回っていません。つまり、家計のお金の大半は、預金・保険・年金・国債・社債などの安全資産に向けられているのが現実です。 もっとも、「カネは天下の回りもの」ですから、それでも、こうして家計のお金を受け入れた金融機関や保険・年金が、リスクマネーを供給していれば良いとも言えるのですが、これも残念ながらそうはなっていないようです。 後述するように、そもそも、銀行は、企業に融資をする立場と、株主として企業経営に関わる立場の間に利益相反が起きますので、独禁法や銀行法で、一般事業法人の株式の保有に制限を受けています。そういう事情もあり、リスクマネーである株式・出資金には、89兆円だけしか振り向けられていません。
では欧米では株式やPEファンドに多額の出資をしている年金や保険はどうでしょうか。日本の年金・保険は、実に総額520兆円を運用しているのですが、ここも、国債に150兆円、外債に81兆円、融資に71兆円、国内債券に24兆円が振り向けられている一方、株式・出資金には89兆円しか振り向けられていません。 つまるところ、家計も、家計のお金を受け入れた外国為替証拠金取引 や年金なども、リスクマネーには余りお金を振り向けておらず、その一方で、国が多額の資金を集めてしまっているということですので、ある意味では、それだけ日本の市場の効率化は遅れているという見方も出来るのです。 さて、本題に戻ります。冒頭の記事で、3社が共同で3000億円を集めてPEファンドに投資するということですが、上記のような日本の資金循環を変える一助として、この動き自体は歓迎すべきものでしょう。しかし、(そのようなことはないと思いますが)仮に3000億円が全部国内のPEファンドに向けられたとしても、国内産業再編に必要とされるPEファンドに必要な資金量にとっては、焼け石に水の状態です。因みに、英国では、GDPの11%弱、米国ではGDPの8%弱に相当する資金が各々の国のPEファンドに流入していると言われます。翻って、日本では、500兆円程度のGDPの僅か0.3%程度、すなわちぜいぜい1兆円台しかPEファンドに向かっていません。仮に米国並みまでその比率を上げるとすれば、40兆円程度がPEファンドの投資されなければならない計算です。家計の行動パターンが一朝一夕に変わるとは思われませんが、是非とも公的部門、ないし、年金や保険などのお金がPEファンドに向けられるように、政策的な支援も欲しいところです。 一方で、PEファンドの側も、こうしたお金の受け皿として相応しいものになっていなければならないことは当然です。そのメルクマールとして、以下に、教科書的なPEファンドの行動原理を纏めてみました。 1 PEファンドの行動原理 PEファンドの行動原理は、独立系、銀行系、証券系によって異なります。系列のファンドは、その親会社の顧客およびその判断に影響を受けますが、独立系のファンドは、出資者の意思決定に影響されるというのが一般的な考え方です。
(1)独立系PEファンド 独立系のグローバルなPEファンドは、出資者のファンド選択基準 に影響されます。欧州のPE投資に関する調査結果を参考に、出資者の選択基準を列挙してみたいと思います。 1) 投資戦略と投資機会 投資戦略が明確で、マネージャーのトラックレコードおよび調達金額などと合致していて、投資戦略が魅力的であること。 2) トラックレコード 上位に入るリターンを一定期間上げていること、実現された投資の数が多いこと、価値創造の手法が優れていること。 3) 投資チーム 各マネージャーがPE業務での確固とした経験、学術的な経験があること。また、マネジメントチームが長期的にチームとして活動していること。さらに、チーム内の収益配分のインセンティブ体系が明確であり、マネジメントチームによる個人的な資金のコミットメントがあることも重要。 4) マネージャーがコアスキルを保有 事業計画に対するフォーカス、専門性(業界知識)、交渉力、内部情報、資産運用 力、価値創造へのフォーカス、ガバナンス/コントロールなど。 5) 案件開拓、投資プロセス、モニタリング、出口戦略 組織的な案件開拓戦略や統制のとれた投資評価プロセスを持って投資した後、PDCAをきっちり効かせたモニタリングを行ない、多様な出口戦略を策定できる力。 6) 独立性 特定の金融機関、大手事業会社の系列に属さず、独立した投資ファンド運営組織として活動し、特定の企業グループの利害から分離されたかたちで、投資先企業の価値創造やステークホルダー全体の利益に資する投資判断や経営支援を行う。殊に後述するように、金融機関の立場と事業会社の株主の立場には、基本的な利益相反があることに留意が必要。 なお、本邦の事情を補足すれば、再生フェーズを経て次のステップ「価値創造」に向かう日本企業の積極的な事業再編及び業界再編においては、特に戦略的なM&Aなどの関係する局面にて、特定の企業グループとの強い利害関係を持つことで行動の制約を受ける場合がある。殊に、そのため、日系金融機関が合併により主要3グループのみとなるなど、複数の事業会社とそのファイナンシアル・アドバイザー、メインバンクという関係者の利害調整には細心の注意が必要になってきている。そのため、事業会社が機密度の高い戦略的な案件について金融機関グループに早い段階で相談することが困難となるケースも増えているといわれており、この面からも、独立的な立場の事業金融機能提供者の存在意義が増している。 7) その他 潜在的な投資案件の数の多さ、投資対象の数の多さや地域・業界の分散、さらに投資家自身のPEポートフォリオ戦略との合致、透明且つ定期的な報告の有無など。
(2)銀行系のPEファンド 銀行は、親密な投資会社を通して間接的に投資機能を持つケースや、自らベンチャーキャピタルを持つケースがあります。 銀行が投資機能を必要とする背景には、単に債権者としての経営関与では限界があり、株主権の価値が見直されていることがあります。また、銀行や銀行系証券会社は、直接・間接の収益機会の追求という観点からも、投資機能に注目しているようです。しかし、そもそも株主(投資ファンドの場合はファンドへの投資家)と債権者の間には利益相反があります。銀行法の制約で銀行本体や関連会社は一般事業会社の株式を50%以上保有することはできません。5%超の株式取得にも、銀行法や独禁法の制約があります。更に、銀行による優越的地位の濫用を防止する観点から、銀行の証券業務にもファイヤーウオール規制が課されていることにも留意が必要でしょう。 こうしたことに鑑み、銀行が何らかの形でファンド運営会社の意思決定に影響力を有するファンドが、一般事業会社の株式を購入することを銀行法や独禁法、或いは優越的地位の濫用防止の精神に照らしどう考えるのかは、今後の大きな課題と言えましょう。 (3)証券系のPEファンド 銀行の支配下にない証券会社は、銀行法の影響を受けることなく、自己資金投資(PI)ないしは子会社・関連会社においてPEを活発に行なう例も見られます。 然しながら、証券仲介業者によるPE業務は、顧客との間で常に利害相反があると言っても過言ではなく、また自己投資業務と投資銀行業務間をはじめとする各種業務間の利害相反を防ぐにも細心の注意が必要です。更には案件の大型化による証券会社グループ自身の財務健全性に与える影響も無視できず、PEファンドを自ら支配することの是非は銀行とは違った観点から、注意深く検討すべきであると思われます。 2 まとめ 連載の第一回で述べたように、産業再編の主役は、欧米では既にPEファンドに移ってきています。日本でも、以前のような行政指導や銀行主導で企業経営の改善や産業再編に取り組むことは無理があります。 そのためには、日本のお金の流れが変わるべきなのですが、お金の受け手であるPEファンドの側も、グローバルスタンダードに則り、より投資家の利益に忠実に行動することが求められるのではないでしょうか